日語フェローシップ 2023-08-24

聖書の言語

これまで早天祈祷会で詩編や箴言を学んでいた時、意味不明の所がある度に、日本語や英語の様々な訳の聖書で対応する箇所を調べて話し合っていました。そうすると、聖書の言葉の使い方も意味も、訳によって随分違ってくることが分かります。つまり、原典に立ち戻らなければ、聖書の言葉の真の意味は分からないのかもしれません。
その原典の言語ですが、旧約聖書はエズラ記とダニエル書の一部がアラム語で書かれている以外はヘブライ語、新約聖書は全てギリシャ語で書かれました。このアラム語はアッシリア、バビロニア、ペルシアといった旧約時代の大国の公用語として用いられ、いわば当時の国際言語でもありました。しかし紀元前4世紀、これらの国々は現在のギリシャ北部にあったマケドニアのアレクサンダー大王によってインド北西部に至る大帝国に統一され、アラム語もギリシャ語に取って代わられます。つまり新約聖書の世界では、日常ではヘブライ語が用いられても、公用語はギリシャ語となっていたのです。
そうした中で主イエス・キリストは、ヘブライ語やアラム語を使われていた、と言われています。例えば、マルコによる福音書にある「アッパ(父よ)」や、十字架上の有名な「エロイ・エロイ・レマ・サバクタニ(我が神、我が神、なぜわたしをお見捨てになったのですか)」はアラム語だそうです。こうしたイエス・キリストの言葉は、新約聖書の著者がギリシャ語に訳して聖書に書き記しました。そして私たちが普段読んでいる聖書は日本語なので、いわば訳本の訳本を読んでいる事になります。
日本語にも古典や現代国語があるように、ヘブライ語にも歴史的に見ていくつかの世代があります。旧約聖書が書かれた古代ヘブライ語は原則として子音のみを文字として表していました。例えば「יהוה (YHWH)」、この言葉は「神」を意味しますが、読み方は三つあります。一つは「ヤハウェ(Yahweh)」、二つ目は「エホバ(Jehova)」。共に「YHWH」を発声した音をラテン語で書き表したものとされています。
そして三つ目の読み方は「アドナイ」、本来の意味は「我が主」です。神様を名前で呼ぶことを怖れたユダヤの人々が、「YHWH」にニクダーと呼ばれるフリガナを付けて、半ば無理矢理に「אֲדֹנַי (アドナイ)」と読ませた、と言われています。
新約の時代は中期ヘブライ語と呼ばれ、その頃書かれた「死海文書」は良く知られています。先ほど紹介したニクダーが登場したのもこの時代です。その後は中世ヘブライ語として純粋に著述言語になっていくのですが、19世紀後半のシオニズムの台頭を機に、各地方独特のヘブライ語の発音や語順などを整備し、日常の話し言葉としての現代ヘブライ語が形成され、現在に至ります。
言うまでもない事ですが、言葉は時代と共に変化していきます。聖書は確かに神の御言葉ですが、それを書き記したのも訳したのも、夫々の時代に生きた人間です。私たちが聖書の言葉を学ぶとき、その事を心に留めておく必要があるでしょう。

以下、日語フェローシップからのお報せです。

  • 8月27日(日)は日語礼拝の日です。メッセ―ジは以前シカモア教会を牧されていた吉岡恵生先生が担当してくださいます。是非ご出席ください。
  • 毎週金曜午後4時からギホンの泉と、毎週土曜日朝6時半から早天祈祷会を守っています。以下の8x8からご参加ください。
https://8x8.vc/wumc-nichigo/gihon-spring
  • サフラン会は夏休みが終わり、9月22日(金)から再開します。この日はグレイあい子さんがグァテマラのタペストリーについてお話をしてくださいます。